京都芸術大学 アートプロデュース学科

澁谷 茉央 さん
2022年度卒
和歌山県御坊市地域おこし協力隊観光PR

あなたにとってアートプロデュースとは何ですか?

2024.10.31 Thu.

生きていく術

質問1. どんな仕事をしていますか。具体的に教えてください。

 和歌山県の真ん中に位置する「御坊市」というまちで、観光PRの仕事をしています。市役所の観光係として在籍し、御坊市観光協会の事務局も担っています。季節によっては毎週末何かしら開催されるほど御坊市ではイベントが盛んで、2年目になってからは主担当としてキャンプ場の市民無料開放イベントなども企画・運営させていただきました。
 またそれらイベントに係る広報活動の一環として、ポスターやチラシのデザイン、SNSの運営なども担当しています。他にも、着任のタイミングがよかったのもあってマンホールや道路表示、看板など課を超えて様々な公共物をデザインさせていただきました。
 観光ないしPRの仕事は華やかにも見えますが、人数が限られていることもあって雑務や現場仕事も沢山あります。しかし、地域に根ざした活動は良くも悪くも反響をダイレクトに伺えるので、都会で企業に勤めるだけでは得られない学びの多い日々です。

質問2. アートプロデュースを学ぼうと思ったきっかけは?

 順番としては、芸大に行きたい→京都芸術大学を知る→アートプロデュースの領域を知るという過程なのですが、高校一年生の時に大学案内のパンフレットをペラペラとめくっているときに「芸術大学」の文字が頭から離れないと気づき、親に相談して芸術系の大学進学を志しました。KUAを知ったのも就職に強いという噂を聞いた母からの紹介です。

 第一希望は空間デザイン学科を希望していたのですが、二日間通して授業を体験するタイプの入試方法を受験する際にもう一学科併願できることを知り、もったいないからという理由で裏方そうなアートプロデュースコースを第二希望として選択しました。空デでは自分の不器用さと周りのレベルの高さに完敗しましたが、アートプロデュースコースの入試で人生初めての対話型鑑賞プログラムを体験し、アート=作ることだけではないことや、作品を通して哲学を得ていく体験など全てに衝撃を受けました。また入試で出会った子たち(後の同級生)が個性豊かで、普通科に通っていた私にとっては人生で初めて出会った類友のように感じ、自分の居場所はきっとここなのだろうと感じたのをよく覚えています。

質問3. 在学中思い出に残っているエピソードを教えてください。

「KUA ANNUAL」(現DOUBLE ANNUAL)という、大学内のギャラリー「ギャルリ・オーブ」と東京都・上野にある「東京都美術館」の二拠点開催の公募展にアシスタントキュレーターとして参加したことです。プロのキュレーターをお招きし、他学科の学生や教員と1年間のミーティングを通して展覧会を作り上げていくことは、本当にしんどくてとにかく大変でした(笑)素晴らしい経験だったと振り返れば言えますが、作品に対する言葉を取り扱うことの怖さやアーティストとのコミュニケーション、ミーティングの緊張感をよく覚えています。美術館で人々に作品を見てもらうことの意義とは何か、なぜ私たちはアートと向き合うのか(向き合えたのだろうか)について常に問い続ける時間は、恐らくアートプロデュースコースで完結する授業を受けるだけでは得られなかったのではないかと思います。とは言えどもアートプロデュースコースは座学だけでなく展覧会の開催や他地域との共同プロジェクトも多いので、しんどさやめんどくささはチャンスだと思い取り組む方が面白いかと思います。

 前述では少し真面目になりましたが、朝まで語らいながらお酒を交わしたり、本気で恋バナをしたり、爆笑し合う時間は単なる思い出話ではなく今でも地続きで、アートプロデュースコースの仲間たちはなくてはならない存在です。くさい表現になってしまいますが、仲間たちとのたわいもない日々の積み重ねが今の私の根源を作ってくれているのだと、社会人になってからより強く感じています。

質問4.あなたにとってアートプロデュースとは何ですか?

生きていく術

質問5.それがどのように今の仕事に活かされていますか?

 地方では「ここには何もない」とよくつぶやかれています。しかし現実には何もないということはなく、実は私が見えていない、もしくは見ようとしていなかっただけだと、アートプロデュースの視点を持てば気づけるのだと思います。偉そうなことを言いましたが、アートプロデュースコースでは相手の視点を想像して見せ方を考えること、それを実現まで持っていくこと、対話すること、自己開示することを学びました。様々な兼ね合いや過去の事例などが邪魔をすることもありますが、アートプロデュースコースでの学びの延長線として今日も仕事に取り組んでいます。

  • Interviewer京都芸術大学 アートプロデュース学科